第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
『ゾッコンって!そんなそんなっ』
「ゾッコンでしょあの人はキミに。」
『…つ、月島くんは好きな人いるの?』
話題を変えたかったのかアタフタしだした彼女が僕に話を振る。今1番触れて欲しくなかった気がする話題を。
「…」
『えと…月島くん?』
「好きとか…よく分かんない。
僕好きな人いたことないし。」
『そうなの??』
不思議そうに顔を傾ける彼女。
「なに?いそうに見える?」
『あ、そうじゃなくて。
私も好きな人っていたことないから…』
「ふーん。
てっきり菅原さんが好きなのかと思ってた」
『孝ちゃんは幼馴染なだけだよ。
それに私なんかじゃきっと釣り合わない。』
「そう?あの人もキミにゾッコンでしょ」
『一緒にいるのが当たり前みたいに育ったからかな。それに中学生の間は離れてたから尚更べったりなだけだよ。』
「そういうものなの?
僕幼馴染って山口しか居ないからさ。」
西谷さんも菅原さんも本気でを想ってるでしょ。本人は全く気づいていないというか真に受けていないらしいけど。
『やっぱり山口くんと昔から仲良しなんだ!』
「やっぱりってなに。
そんなに仲良くしてないけど。」
『阿吽の呼吸?みたいな!
ツッキー!って呼ぶ山口くんいつも目がキラキラしてて、月島くんそういうの嫌がりそうなのにちゃんと返事してるし、仲良いんだなあって。』
真似とはいえ山口以外にその呼び方をされるのは初めて。なんだか擽ったいような、距離が縮まったような感覚になる。
「ははっ、キミがそうやって呼ぶと違和感だね」
『あ、月島くん笑った!』
「僕だって笑うよ」
『月島くんの笑顔独り占めしちゃった!』
「なにそれ…笑」
そう言っていたずらっ子のように笑う。
彼女といると心臓がきゅうっとなる。
『あ、私こっちだからまたね月島くん』
「お…送ってこうか」
初めて口にしたセリフはあまりにも小さな声だった。
『でも、月島くん遠回りでしょ?』
「あ、いや…暗いし。
別にいいならいいけど。」
どうしてか離れがたくなる。
まだ一緒にいたいと思ってしまう。
『それじゃあせっかくだし…いいかな?』
「あ、うん。」
トクントクン、と鼓動が早くなる。