第19章 好きって言って/伊武深司
「お前から連絡したの?へぇ、いつの間に連絡先なんて交換してたんだよ。」
『初日に、何かあった時のためにって交換したんだ!』
「ふーん。まぁ、日曜空けとくよ。じゃ。」
俺はそう言って一方的に電話を切った。
…神尾と、どっちから言い出して連絡先交換したんだろ。
なんでこんなにイライラするんだ。神尾とが楽しそうに電話で話しているところを想像するとなんかイライラする。
俺は小さくため息を吐くと、考えないようにと眠りについた。
☆☆☆
次の日、午前部活の為に学校へと向かって歩いていると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。
「伊武せんぱ〜い!おはようございます!」
振り向くとが、走ってこちらに向ってきていた。
俺はニコニコしながら大きく手を振るに思わず見とれてしまっていた。
「おはよ。家こっちなんだ?」
「はい!伊武先輩の姿が見えたので、走って追いかけてきちゃいました。」
そう言ったは、うっすらと首に汗を流しながら息を切らしていた。
「わざわざ追いかけなくても部活で会うのに。」
「だから、一緒に行きましょ?ダメですか…?」
は首を傾げながら上目遣いにそう言った。
「ダメじゃないけど。俺なんかと一緒にいて楽しいかな。」
「楽しいですよ…あ!そう言えば、今度の日曜日!海でみんなで遊ぶんですよね!伊武先輩も、来るんですよね?」
「あ、あぁ。そのつもりだけど。お前、無理するなよ。マネージャーの仕事始めたばっかりだし、疲れるだろ。」
「心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫ですよ!これもテニス部のみんなと親交を深めるいい機会です!」
は両手でガッツポーズをしながら目を輝かせてそう言った。
「あ!そう言えば、伊武先輩の連絡先聞いてもいいですか?」
は思い出したかのようにそう言うと、おもむろに自分のカバンから携帯電話を取り出した。
「いいけど。まぁ、神尾の連絡先知ってるなら俺に特に用はないと思うけど。」
「え?あの…テニスの事じゃないと連絡しちゃ…ダメですか?」
「…?まぁ、いいけど。」
俺が答えると、は安堵の表情を浮かべほっと胸を撫で下ろしていた。