第17章 幸せな音が溢れる世界で
すると杏寿郎さんも
「なんだ!宇髄!」
天元さんに負けず劣らず大きな声を出した。
「鈴音はなぁ、馬鹿で阿保で、この派手を司る神…宇髄天元様の継子とは思えねぇ程後ろ向きなどうしようもねぇ奴だ!」
そんな天元さんの言葉に
……その通りなんだけど…みんなの前でそこまでぼろかすに言わなくてもいいのに…
私はがっくりと項垂れかけた。けれども、”だがなぁ!”と続いた天元さんの言葉に、その続きに耳を傾けようと、下を向きかけていた顔を再び天元さんへと向けた。
そして
「そいつは俺様の、大事なかわいい継子だ!万が一泣かせるようなことがあれば、俺の嫁たちが速攻搔っ攫いに行くからな!覚悟しておけ!」
今日一番の大声で発せられたそれらの言葉に
「……っ…!」
私の涙腺は、自分でも驚くほど一瞬で崩壊した。
両手でコップを持っており、ボロボロと流れる涙を拭うことも出来ず、けれども天元さんの顔をしっかりと見ていたくて、私は大きく目を見開きながら、天元さんの顔をじっと見続けた。
一方杏寿郎さんは
「そんなこと、お前に言われずともわかっている!俺は絶対に、何があろうと鈴音を泣かせるようなことはしない!故に、攫って行く事など絶対にさせはしない!」
天元さんに負けない大声で、そう言い返した。
杏寿郎さんの返事を聞いた天元さんは、ニッとその顔に笑みを浮かべ、杏寿郎さんの両手に持たれている空のコップにトクトクと酒を注いだ。
そしてその後
「…鈴音」
先ほどの大声が嘘のような、穏やかな声で私の名を呼んだ。
「…っ…はい…」
「なに泣いてんだよこの馬鹿弟子が。折角別嬪にしてもらった顔が台無しじゃねぇか」
そう言って笑う天元さんの顔は酷く優しいそれで、”泣くな”という方が無理な話だ。
「…っ…だって…天元さんが…あんなこと…言うから…!」
「っは!お前、意地っ張りなんだか泣き虫なんだか、相変わらずわかんねぇ奴!…まぁいい。お前に言いたいことは一つだけだ。その無駄にいい耳かっぽじってよく聴けよ!」
「…っ…はい!」
天元さんの言葉を、一言一句聴き逃さないよう、その口元へと意識を集中させた。