第17章 幸せな音が溢れる世界で
「その口ぶりからすると、甘露寺と伊黒…2人は恋仲になったのか?」
杏寿郎さんがそう尋ねると、恋柱様は桃色だった頬を、今度は真っ赤に染め
「そうなんです!蝶屋敷での療養の最終日…伊黒さんが私の部屋まで来て”甘露寺が好きだ。まずは俺と恋仲になって欲しい”……なんて言われちゃったんですぅぅぅ!!!」
綺麗に結ってある3番の三つ編みを、ブンブンと振り乱しながらそう言った。
「わぁ…!それはおめでとうございます!それに”まずは”って言うことは、蛇柱様はもうその先のこと考えてるってことじゃないですか!」
「そうなのそうなの!」
恋柱様は大きく2回うなずいた後、その手をすっと伸ばし、”だからね!”と言いながら私の両手をがっしりと掴んできた。
「恋の先輩である鈴音ちゃんに、これから色々相談に乗って欲しいの!だからねだからね!私のことも”恋柱様”なんて寂しい呼び方じゃなくて”蜜璃”って名前で呼んで欲しいの!お願いっ!」
はっきり言って、私と杏寿郎さんがこうなるまでに至った経緯が、誰かの参考になるとは到底思えない。それでも、そんな嬉しい願い出を断る理由など在る筈もなく
「…っ…はい!それじゃあお言葉に甘えさせてもらって、これからは”蜜璃ちゃん”と呼ばせて下さい」
私は恋柱様…ではなく、蜜璃ちゃんに向けにっこりと微笑みかけてみせた。
「やったわぁー!それじゃあ近いうちに、私としのぶちゃん…3人で改めて会いましょう!そこで煉獄さんと鈴音ちゃんのお話、詳しく聞かせてね!」
「それは楽しみです。後ほど予定を合わせましょう」
蜜璃ちゃんとしのぶはそう言いながら立ち上がり、”それじゃあまた後で”と言って自身の席へと戻って行った。
遠のいていく2人の背中は”鬼殺隊最高位である柱”というよりも”普通の娘”という言葉が似合って見え、なんだか心がほっとした。
「伊黒と甘露寺…二人が夫婦となる日が待ち遠しい」
「……そうですね。でもきっと、そう遠くない未来にそうなる日が来ますよ」
「だといいのだが!」
杏寿郎さんはそう言いながら鯛の塩焼きへと箸を伸ばした。
杏寿郎さんも、それなりに会話に参加しているはずなのに、既に膳の半分以上がその姿を消しており、私は思わず首を傾げてしまう。