第16章 私が守るべきもの
目の前にある善逸の顔も見ることが出来ず、私は顔を真下に向け、隊服のズボンを、手が真っ白になるほどの力でギュッと握りしめた。
「……姉ちゃん…っ…でもさ…」
善逸が力のない声でそう呟いた直後。
フッと地面を踏みしめる感覚が一瞬で無くなり
「「……え?」」
ヒュッ
「…っ……!?!?!?!?」
「いぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!落ちてる!?俺たち落ちてるぅう!?地面どこ行ったわけぇ!?なんで周りが扉だらけになったわけぇぇぇぇぇえ!?!??!?」
先程まで立っていた景色とは一変、私と善逸は突然おかしな空間へ放られてしまったかのように、どんどん下へと落ちていく。
下を見てみるも、地面のようなものは全く見えず、ただただ扉や壁に囲まれた空間を落下し続けるのみだ。
……っ…ここは…いったい何…!?……風を切る音で…音が全然聴こえない……でも…鬼の気配を…下の方から感じる…!!!…もしかして…何らかの力で…敵の陣地に放り込まれたの……!?
「いぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「…っ…もう!善逸うるさい!!!」
「だってぇぇぇぇぇぇぇえ!」
そんなやり取りを交わしていると
「鈴音!!!!」
「…っ和!?」
初めて聴く、おっとりとはかけ離れた声色の和が、放たれた矢のごとく真っすぐと下降して来た。
そんな和に寄り添うように
「チュン太郎ぉぉぉお!俺を助けてぇぇぇえ!!!」
「チュン!チュンチュン!」
チュン太郎も、その小さな羽を懸命に広げている。
「鈴音よく聞くの!お館様のお屋敷が襲撃を受けたの!鬼舞辻が来たの!鬼舞辻と交戦していた柱及び隊士全員、この異空間に放り込まれてるの!」
「…っ…こんな急に…!…お館様はどうなったの!?」
「お館様は……もういないの!囮になるって作戦だったの!」
「………そんな…!」
「………」
いつの間にかうるさい善逸の叫び声は聞こえなくなっており、和の声と、風を切る音だけが私の耳に届いていた。