第26章 君の居ない時間※
刀鍛冶の里に入ると異様なほど静まり返っているその地。
人は全く出歩いておらず、私たちの足音しか聴こえない。
ほとんど予備知識なく此処にきたが、昨日宇髄さんが里の長がいることを教えてくれていたので、まずはその人に挨拶に行った方がいいのだろう。
しかし、どこにその人がいるのかも分からない私たちは当てもなく里の中を歩くことしかできない。
誰かに聞こうにも誰も出歩いていないのだから。
「…困ったなぁ…。誰かいないかなぁ?」
「まるで廃墟の里ですね。」
恐らく人はいるだろう。
家の中には人の気配がする。しかし、皆自主的に病にかからないように家の中にはいる気がする。
そうすることでスペイン風邪に罹らないようにしているのだ。
自宅待機というのはとても有効だし、この場合苦肉の策だったかもしれないが、それによってこれ以上の感染拡大の危険はないと言えよう。
どんどんと里の中には入ってきているはずなのに人に出会わないことで、どうしようか…と一旦歩みを止めた時、急に山から人が出てきた。
「誰だ、お前らは。」
「「「「!?!?」」」」
咄嗟に正宗達が自分たちの背後に私を隠してくれたが、本来なら私が守らないといけなかったのでは…?この三人と一緒にいるとつい肩の力が抜けてポケーっとしてしまうのは悪い癖だ。
突然声をかけてきた人物はひょっとこのお面を被り、こちらをジッと見つめたまま動かないので、彼にことの次第を話して、長に会わせてもらおうと思い、口を開いた。
「……あの、鬼殺隊の産屋敷様の命で来ました。神楽ほの花です。病が蔓延しているとのことで救護に参りました薬師です。長にお会いしたいのですが場所がわからず途方に暮れておりました。」
するとひょっとこをつけた男性は私の顔をじっと見つめると一言だけ「付いてこい」と言うと歩き出した。
正宗たちと顔を見合わせたが、此処にいたとしてもどうせ分からないのだから彼の後について行くことにした。
怪しい行動をしたらこちらも四人いるのだから応戦すればいいだけの話だ。