第4章 病魔 前編
「っ………。」
みずからの名前を呼ぶ声が聴こえた気がして、ヴァリスは開いていた本からおもてを上げた。
読んでいたのは、この世界の逸話を集めた童話集だ。
幸せな結末の話から、ほろ苦さの残る余韻を与える話まで、どの童話も興味深くて。
(この本……本当に楽しい)
ぱら……と頁をめくりながら、先刻の出来事を繙く。
何気なく通りかかった図書室で、本と本がなだれる音をとらえ。
知らず入っていくと、フェネスが本たちの下敷きになっていた。
濃紅色のアシンメトリーなウルフカットの
左サイドの髪は生え際から毛先にかけて飴色に染まり、
温かみのあるシトリンの瞳をしている。その右目に金色のモノクルがのぞき、
その胸元には青い蝶を型どったブローチが留められている。
肘の辺りに付けられた黒のアームベルト付きの白いシャツの
七分丈に折り返した袖口は白と黒のストライプ模様で、その下には黒いアームカバーがのぞく。
ハウレスの魔導服のジャケットと同様の蔦草のエイブロダリー(刺繍)装飾の
入った褐返色のベストにはその両胸元に白い十字架の刺繍入りで
そのお腹にはダブルブレスト風に並んだ(釦が左右対象に並ぶ装飾)金の釦が
四つ並ぶフロントパネル(お腹の切替パーツ)がほどこされている。
ベストのテイル部分はバタフライテイル(テイル部分が左右にを分かれ、
羽のように広がる装飾)に広がっており、
浅葱色の地に蝶の羽を型どった黒いアウターテール
(外側から見える主素材部分)が印象的で。
ベストの同系色の脚衣に黒いレッグハーネス
(太腿〜膝付近からブーツを固定・装飾するベルト)に吊るされた
黒いアンクル丈のポインテットトゥ・ショートブーツを合わせ、
そのアウトソールは金色のパーツに切り替られたブーツを履いていた。