第15章 青の日々 (及川徹)
奥の奥にしまって二度と思い出さないようにと蓋をした記憶が簡単にこじ開けられていく音がする。指先が冷えていく。怖い。
隣に立っていた及川が庇うように自身の背に私を隠す。もしかしてあの日話した当事者だって気づいたのかもしれない。
「及川くんてやっぱり近くで見ると背高いねぇ」
私に向けるものとはまるで違う声色。及川に近づかないで…私から何も奪わないで…。
「もうちゃんに関わらないでください」
「え?」
猫なで声とは打って変わって動揺する声。及川が女の子に言い返すところなんて初めて見た。
「及川くんにチクったの?」
引かれた勢いのまま及川の背にトン、とぶつかってそのまま動けなくなってしまった。広い背中があたたかくてひどく安心してしまう。
やっぱり近くにいたらいけないのかもしれない。
及川の邪魔をするために生きてるんじゃないのに。ただ傍にいたかっただけなのに。なんで上手くいかないんだろう。
「及川くんもこの子に騙されてるの?」
「はい?」
及川を巻き込まないで…お願い。
「色んな男に色目使ってるよこの子。私たちの学年のバスケ部のキャプテンだって寝とったんじゃないかって噂まわってるし〜それが原因で彼女と別れてるんだよ?」
あのキャプテンさんと話したのは告白されたあの日が初めてだったなんて言い訳しても聞いてくれないんだろうな。あぁ、泣きそうかも。泣き顔なんて見せたくないのに。
「及川くん騙されてるよ、一緒にいない方がいいよ?」
「俺の一目惚れなんで。何も知らないくせにちゃんのこと悪く言わないでもらっていいですか。」
「え…?」
え…、うそ。いいよ及川…庇わなくていい。
もし及川に矛先が向いたらと思うとそっちの方が苦しい。なのに声が出ない…情けなくて涙が出そう。ほんと…最悪だ。