第20章 ポッピンサマークラッシュ◉三馬鹿
「白雲くーん!気をつけてー!」
楽しそうに大きく手を振る彼女目掛け、滑り込むように入った砂浜
個性さえ使えればめぐを攫って独り占めできるのに、そんな考えすら頭をよぎる
「こらーー!俺もまぜろーーー!!」
「白雲くん早くー!」
微笑んだ彼女が俺に大きく手招きをする
しかし触れようと伸ばした手が彼女に辿り着く寸前、華奢なその身体はくるりと俺に背を向けて
瞬間、 めぐの焦ったような声がひざしの笑い声に重なった
「きゃ、冷た、っ!」
「せっかく来たんだ、童心に返ろうぜ?」
跳ねる飛沫がきらきらと陽の光を反射して、彼女の笑い声が打ち寄せる波音に混じる
触れられたはずの手は音を立てて水を掬い、その瞳にはひざしだけが映って
「最高に気持ちいいね!」
「だな!そんでもってめぐは最ッ高に可愛い」
無邪気にはしゃぐ彼女が振り返ると、その髪を飾る雫がいくつも落ちて
オレのモンにしたい、ひざしが指を絡めると彼女の顔が火照ったように色付いた
「や、山田くん・・っ?」
「マジな話、考えてみてよ」
届きそうで届かない想いが、掴めそうで掴めないその粒が、
一か八かの勝負、額の汗を乱暴に拭うと真っ直ぐに彼女を見つめ思い切り足を踏み出して
両腕でその背中を掻き抱こうとした瞬間、目の前は日差しを反射する金色の髪で埋め尽くされていた
「げっ」
「朧ってばホントにオレのコト大好きなんだからァ!」
「あはは!本当に仲良しだねー!」
オレも好きだぜ?、そう言って薄いサングラスの向こうでにやりと細まった緑色、思わず力を込めた腕にひざしが笑い声をあげた
「そうは行かねェよ、朧サン」
「・・お前ら何してんだ」
ショータの呆れた声と同時に耳元で囁かれた低音、パッと俺から腕を離したひざしが彼女に駆け寄る
「山田くん見て!綺麗な貝殻!」
「待ってろめぐチャン!ひざしクンが今行くぜー!」
なにが多少の優越感だ、仲良くしゃがみ込んだ二人の距離に思わず歯を食いしばる
頬に付いた雫をひざしが拭うと、恥ずかしそうに微笑んだ彼女が目を伏せた
「・・・・・・」
「山田は大丈夫、だったか?」
皮肉な笑みを浮かべたまま深い溜息を溢したショータを見遣ると、睦まじい二人の世界を飾る青い空が少しだけ不快に感じた