第16章 武将くまたん
秀吉「まあまあ、落ち着け。文を読むぞ。
じゃっくはとても天邪鬼。一見、冷たくて怖いけど心根はとても暖かくて優しい。
姫たんはにぶいので、じゃっくの言葉に含まれた優しさに気づくのが遅れました。
ごめんなさい。
のぶたんと話していると兄弟みたいで微笑ましい。
とても努力家で弓や剣術の稽古も一生懸命。
書庫で読書しているかと思えば薬草を取りにでかけて夜な夜な薬を調合している。
いつ寝ているのか心配。
じゃっくは辛抱強くお話を聞くのがとっても上手。
いつも姫たんのどうでもいい話を聞いてくれてありがとう」
家康「礼を言うくらいなら天邪鬼の『じゃっく』なんて変な名前つけないでよ…」
家康がポツリとつぶやいた文句には、いつもの覇気がない。
『家康、お薬の勉強をしたいの。
でも教えてもらう時間はないから、せめてお手伝いだけさせてくれないかな?』
『おはよう、もう鍛錬終わらせてきたの?
朝早いんだね』
『鳴くまで待とう…だもんね。
家康のその辛抱強さは将来、絶対役に立つよ!』
(手伝いを申し出たのは俺の睡眠時間を心配してのことだったのか?)
今更気が付いた舞の優しい嘘。
乱世において真っ先に死んでしまいそうな女だった。
見るからに弱そうで、どこまでも甘い考えをしていた。
心配で目が離せなくて、そうしているうちに舞が持っている一本筋が通ったような強さに気が付いた。
常識知らずのところも多々あったけれど、どこか不思議な言動と考え方に興味が湧いた。
『家康は十分強いよ。ずっと耐えてきたこともあるだろうし、たくさん努力もしてきたじゃない。
自分のこと褒めても良いと思うよ』
『戦がなくなったら家康はまっさきに何をしたい?』
過去の人質時代の話をしたこともないのに、まるで知っているかのように話していた。
ホトトギスがどうのこうの、よくわからない独り言も口にしていた。
こんな戦だらけの世で『戦がなくなったら』なんていう夢のような仮説をたてて聞いてきたり…。
(目が離せなくて、でも、あのフニャフニャと笑う顔が俺は嫌いじゃなかった)
強くあろうとしているのに、あの顔を見ると肩の力が抜けてホッとする家康が居た。
(もう会えないのか…)