第17章 殺したくてたまらないという顔
手を握り、ゆっくりと開く。一瞬白くなった手のひらに血が通うのを眺め、アリアは顔を上げた。エルヴィンは何も言わず、アリアが喋り出すのを待っていた。
「……団長に、お聞きしたいことがあって」
「あぁ」
「少し立ち入った話なので不快に思われるかもしれません」
「君が意味もなく俺を不快にするとは思えない。気にせず話してくれ」
エルヴィンの穏やかな言葉にアリアは小さく頷いた。
少しだけ肩から力が抜ける。息を吐き出し、唇を湿した。
「以前、団長とわたしとで訓練兵団に行ったことを覚えていらっしゃいますか?」
「もちろん。君のスピーチは素晴らしかった」
「ありがとうございます」
気恥ずかしさにアリアはモゴモゴと口ごもる。
咳払いをして「それで、」と言葉を続けた。
「その日の夜、一緒にお酒を飲みましたよね。あのとき、わたしはずいぶんと酔っ払ってしまっていて細かいところまで記憶しているわけではないのですが、たしかわたしの両親の話をしたと思います」
あの夜、アリアの心は完全に緩み切っていた。酒のせいだ。
そのせいで今まで誰にも打ち明けてこなかったことを口に出していた。それはアリアがずっと抱えていた罪についてだった。
エルヴィンは瞬きだけで返事をする。
「両親がわたしのわがままのせいで死んでしまったと言ったとき、エルヴィン団長も自分にも同じようなことがあったとおっしゃっていました」
心臓がかたい音を立ててアリアの体を内側から叩く。
それを聴きながら、アリアは両手を強く握りしめた。
エルヴィンの表情は一切変わっていない。それどころか、まるでアリアがこの話をするのを望んでいたかのような面持ちだった。
「お父様が壁の外についてある考えを持っていたと。だからこそ死んでしまったと」
「……いいや、アリア」
そこで初めてエルヴィンが口を開いた。
乾いた声だった。
「俺の父が死んだのは俺自身が原因だ」