第7章 夏休みは任務です②~大人の階段登る編~
「身体、痛くないかい?」
『硝子に治してもらったから痛くないけど、肋骨折れたところはなんかまだ痛い気がする。』
いつか五条を投げ飛ばし返してやりたい、と花子はオレンジジュースを飲みながら共有スペースのソファーで横並びに座りふにゃりと笑う。今日の訓練で骨を何度か折っていたのは目の前で見ていたので、もちろん心配はしている。
しているが、私が今し方心配したのはそれじゃない。ということを花子はきっと気が付いていない。
「そうか。花子はハジメテだから優しくしなくちゃって、これでもすごく我慢したんだが、次はもう少し本気で抱いてもいいってわけか。」
『なっ、』
そこまで言うとみるみるうちに顔を赤くした花子は、漸く私が心配していた正解に辿りつく。
「冗談。お腹とか背中痛かったりしない?」
『ちょっとお腹の当たりは痛いというか、違和感がある・・・かな。』
「ごめん。次はもっと優しくするよ。」
そう言いながら花子の下腹部あたりに手を添える。硝子のように反転術式は使えないけれど、明日には少しでも良くなっていますようにと心で念じて、規則的にポンポンとお腹を優しく叩く。
『・・・なんか心地よくて、寝ちゃいそうだよ。』
「肩でも使いますか?」
『え、いいんですか?』
「もちろん、花子の為の肩だと言っても過言じゃないからね。」
それは過言すぎるよ、と笑いながら花子は私の肩に体重を預ける。夜の8時。寝るには少しばかり早いけれど、今日は沢山身体を動かしたせいか花子はすぐに深い眠りへと落ちていった。
スースーと寝息を立てて、半開きの口は今朝の情事が彷彿とされる。長いまつ毛にサラサラの髪の毛、そのどれもに私は簡単に欲情した。
・・・抱きたい。
その感情を身体の奥底に沈めて鎮めて、親指で掬うように唇をひとなでして触れるだけのキスを落とす。
「見ーちゃった!」
「なんだ、悟か。」
寝ている彼女にキスをして悪いと思ったからか、はたまた寮の共有スペースという公共の場でキスした瞬間を見られてしまったからか、心臓がドキリと跳ねた。
嫌味のひとつでも言われるかと思ったが、不敵な笑みを浮かべた悟は何も言わず自室へと戻った。