第2章 おはよう
その先は言わなかった。今日出会ったばかりの男に変な気を使わせてもおかしな話だ。
「とにかく、俺は大丈夫だ!」
「ダメです!!!」
中彩はそれでも引き下がらない。とても芯の強い女だ。確かに彼女の言うように、無一文の自分がこの世界であてなどない。だが、ここにとどまって良いものだろうか。俺は決めかねた。だが、俺が外に出ていき、1人で危険な目にあうのであれば、俺がここにいては中彩にも危険が及ぶのではないか。
「俺がここにいれば、中彩にも危険が及んでしまうかもしれない。分かって欲しい。」
伝えると、中彩は真っ直ぐに間髪入れずに俺に言った。
「私が煉獄さんを守る立場なので大丈夫です!!!」
俺を守る?そんなに赤くなっている君がか。説得力も何もない、が…俺が続けて口を開こうとするとまたも間髪入れずに中彩が早口に言った。
「とりあえず、煉獄さん、この服は外では着れないのでユニクロ行きましょう!!!異論は認めません!」
彼女が俺が着ていたはずの鬼殺隊の服を持っていた。俺は改めて自分の服装に目をやる。何だこの服は。ヘンテコな模様が描かれている。少々窮屈でもある。その前に、脱がせたのか。気を失っている俺を一人で介抱したのか。
「やることいっぱいあるんです!貴重な週末の2日間でとりあえず必要なものを揃えます!いいですね!」
中彩は少々強引にも話を進めている。俺に気を使わせまいとしているのだろうか。はたまた服を脱がした羞恥心を誤魔化しているのだろうか。
「煉獄さん、お返事は!?」
そっと目を閉じる。
全くもって頑固な女だ。ここで俺が何を言っても聞かないだろう。これは俺も腹を括るしかないらしい。
「うむ、わかった。世話になる!!」
中彩はそれを聞いて柔らかく微笑んだ。良い表情をする。
「じゃあちょっと着替えるのであっち向いててくれますか?」
…しばらく2人で過ごすことに慣れるまで不便に思いそうだ。