【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第9章 渡さない*
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__ピコン、
メッセージの受信音が耳元で聞こえる。
手にとって確認すると念のためそよ香の警護につけた
キャメルからだった。
『異常なし』
ついでに時間を確認すると
もうすぐ午後1時になろうかというところだった。
「寝過ぎたか…」
黒い髪をかきあげベッドを抜けると、
目覚ましの一服をしようとキッチンへ行く。
そよ香がいない時の食事は酷いものだ。
タバコと缶コーヒー、たまにブロックタイプのカロリーメイトをかじる。
好んで食べているわけではないし、美味いとも思ったことはないが
まぁ、手っ取り早くエネルギーを補充するのには良い。
「ん?」
カウンターテーブルに小さなメモ書きを見つけた。
『朝食を作って冷蔵庫に入れてあります。パンは焼いてください』
タバコを一本咥えながら
700リットルは入るであろう大きな観音開きの冷蔵扉を開けると、
下から2段目にラップのかかった皿があった。
日本に来てから、治安の良さに驚かされる。
やはり銃声の聞こえない街は住み心地がいい。
アメリカ暮らしのときは、まとまった睡眠を取ることはほとんどなかった。
週20時間の睡眠など大した問題ではなのだが、
可愛いルームメイトの頼みとあらば
今日くらいはゆっくりさせてもらおうと
赤井はドリップコーヒを淹れ始めた。