第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「ちょっと何して……⁉︎」
「大丈夫。あたしに任せて」
止めようとする佐々木に、星良は安心させるような柔らかな笑みを見せる。そして、井口の服の胸元を開き、腰につけたベルトから筆を取り出した。
小さな壺――墨に筆をつけ、井口の身体へ一画一画 大胆に、それでいて丁寧に、彼女は字を書き連ねていく。
「――【反転術式『修復』】」
柔らかな光が井口の身体を包み込んだ。
「うそ……」
「井口先輩の傷が……」
消えていく。まるで最初からなかったように。
驚く虎杖と佐々木の前で光は次第に収束し、井口がゆっくりと瞼を開いた。
「こ、こは……?」
「病院よ。よく頑張ったわね」
星良が答えると、井口はゆっくり身を起こし、手を握ったり開いたりしながら自分の身体を確認する。
「井口!」
「井口先輩!」
「佐々木、虎杖……? 俺は……」
よかった、と佐々木が泣きじゃくった。虎杖も、胸に込み上げる嗚咽を呑み込み、ズッと鼻を啜る。
「何があったか……今でも信じられん」
「虎杖……信じられないと思うけど、私たち、変な化け物に襲われて……」
「信じるよ。アイツらは化け物じゃなくて、【呪い】なんだ。あの指は特級呪物って言って、【呪い】を引き寄せたり、強くしたりする効果があったんだよ」
昨夜の出来事を反芻した。
呪い、呪霊、呪術師――特級呪物。
目まぐるしく飛び交う聞き慣れない単語、恐ろしい化け物……まだ、納得できない部分の方が多い。
ただ、はっきり分かることがある。悪いのは――……。