第17章 愛月撤灯
「そんなモン飲まなくたって
うまい飲みもんなら
他にいくらでもあんだろ」
「…うん。そうだよね…。
もう飲まないから、」
腕を離せと睦は暗に言う。
しぶしぶ手を緩めると
持っていたグラスを作業台に置いた。
「まだ飲んでねぇだろうな」
「うん…。何でこんなに飲みたいのかな」
そう言ってまたそのグラスを見つめる睦。
俺は慌ててそれを取り上げた。
目の前にあるから悪ィんだ!
「見るな!ダメなんだよ飲んじゃ。
…水菓子ねぇのか」
「もうない」
「今日買いに行くから、早くメシにしようぜ」
まったく目が離せねぇ女だな…
「睦、ちょっとおいで」
買い物も掃除も終え、
一段落した睦を手招いた。
睦はきっと、
昼メシのメニューを考え始める時間だ。
トトッと近寄った睦は
俺の隣にちょこんと座った。
「なぁに?」
「あぁ、疲れてねぇかなと思ってな」
「え…私?大丈夫だよ。ありがとう」
そう言った後、
少し考えるように天井を見上げ
「…そんなふうに見える?」
小首を傾げた。
「いや、見えねぇけど、お前は隠すからな」
「ふふ、過保護だね」
庇護欲と言って欲しい。
「何だよ、当たり前ェだろ。
大切な俺の睦なんだから」
「えぇ…そんな正面きって言われると
照れるんですけど…」
「照れねぇし。ほら、来い」
自分の膝を叩くと
睦はキョトンとしてそこを見つめた。
どういう事か考えているようだ。
「今日から俺がお前を寝かしつける」
「えー…何それ…」
「疲れ、たまってんだろ」
「だっ大丈夫だって!何、急に…」
「このごろお前、ちょっと違うからな。
昨夜もいつ寝たかわからねぇくらいだろ」
「…それは、そう、ですね…」
睦は肩をすくめ、身を縮めた。
「だから、ほら」
「えぇ…あの…一人でも寝られるよ」
…いつまで経ってもこいつは。
「またそういうことを言うだろお前は」
睦の腕を強く引き
強引に自分の膝の上に座らせた。
頬を染め、俺を見上げて
「お昼寝強制とか、子どもじゃないんだから…」
困ったように言う。