第60章 主と酒と
それから御手杵も顕現し、何かと5人で呑むことが多くなった。
「お、今日も晩酌か?俺も貰おうかな。」
夕食時、御手杵が飄々とした風に顔を出した。
「いらっしゃ〜い。今日も呑むぞ〜!」
アタシが徳利を掲げると、彼は軽く笑って席に着く。
「次郎、程々にしておかないと、明日は稽古ですよ。」
兄貴が釘を刺すが、気にする事なく徳利を呷った。
「へーきへーき。酒は百薬の長、ってね!」
「それ、適量呑んだ場合のみだと思います。」
「うゎぷっ!」
突然、真後ろから声をかけられ、思わず酒を吹き出しそうになった。
見ると、主が大きなお盆にお菜の皿を大量に乗せて運んでいた。
全く気配に気づかなかった…。
「…びっくりするじゃないか。折角の酒を吹き出すところだったよ。」
拗ねるように主を見上げると、何とも言い難い顔でアタシの周りをざっと見渡す。
視線を追って見てみると、空になった徳利が10本近く転がっている。
ま、普通はこんなに呑まないよね。確かに。
視線を戻すと、少し困ったように見る彼女とかち合った。
「明日は稽古の日ですよね?二日酔いでも遠慮なく扱きますよ。」
「え…?あんたが稽古?」
「そうですよ。明日は私も入ります。」
どういう意味だろう?
まるで指導するかのような口ぶりだけど…。
まさかね。
こんなか弱そうな子に指導なんか出来るわけないか。
精々が誰かに指示を出して稽古を監督する、といったところだろう。