第54章 政府の企み ーその2ー
レンは、現代に着くと同時に物陰に身を潜める。
空は陽が完全に傾いていて茜色と藍色が混じり合っている。
レンは少し前に、瀬戸と一緒に江藤に本丸を追い出されて亡くなったという女性の親族に会いに行ったことがある。
その時に、変化の術を使って手紙として残っていた遺言を映像に起こしたことがあった。勿論、証拠として利用する為に。
その際、故人のアルバムやビデオを何十回と見てその人の仕草や声をよくよく覚えた。
変化するならその人がいい、とレンは決めていた。
レンは、容易に思い出せる故人のスーツ姿を思い浮かべる。
「変化の術。」
ボン、という音と共にレンの姿は消え、故人のスーツ姿が現れる。
レンは物陰から出ると、自分の姿を見える範囲で確かめてから、早足で歩き出した。
五稜郭からは人が大勢出て来ていて、入る者は少なくなっている。
「なぁ、今日飲み行かね?」
「いいな。久々に一杯やるか!」
「ねぇ、今日の合コン何着てく?」
「私、この間奮発して買ったやつにしようかな!」
「あぁ。みき、一目惚れだったもんね。あの新作。」
「…あ、たっちゃん?ごめんごめん、今日急に仕事入っちゃって、今終わったとこなの。…」
どうやら、就業時刻の様だ。
人がいなければ、目的の場所へ辿り着けなくなるかもしれない。急がなければ。
レンは焦りつつも、目立たぬ様に人の波に沿って中へと入っていく。
ピッ
通行証を翳して入り口をすんなり通ると、それらしい所を探して歩き回る。
人が疎らなお陰で2、3階の全ての部署を隈なく回れたが目的の場所の見当がつかない。
レンは思い切って聞いてみることにした。
帰る直前の、詳しく調べようとしない人を狙う。