第109章 ……………あ
『はい、どうぞ』
「あ…あぁっ、あ、ありがとうございます!」
「よかったな、そーちゃん」
「うん!うん!!すごく、嬉しい…」
ぎゅっと、色紙を胸に抱く壮五。それを見る環は、本人と同じくらい嬉しそうな表情をしていた。そんな2人を見ていると、胸に熱いものが込み上げてくる。
『実は私、サインしたのって今のが初めて』
「そうだったんですか!」
『うん。デビューする直前に、デザインとかは考えてあったんだけど。結局、お披露目する機会がなかったから』
暗い空気にしてしまったかと、はっと顔を上げて明るく笑う。せっかく考えたサインが無駄にならなくて良かった!そう告げた私を、壮五が真っ直ぐに見つめる。
「あなたが、どうして歌をやめたのか。すみません。その理由を環くんから聞かせてもらいました。
実際に辛い経験をされた御本人に、こんなことを言ってしまうのは失礼に当たるかもしれません。もし、僕が同じ立場だったら…耐えられなかったかもしれない。ステージに立ったこと、デビューしたこと、歌を唄ったことさえ、なかったことにしたいと願ったかもしれません。
ですが、どうかこれだけは、知っておいてもらえませんか?僕は、あなたの歌が好きです。楽曲が好きです。大袈裟でもなんでもなく、あなたに出逢えて幸せです。そしてこれからも、その気持ちは変わりません。
だからどうか、Lioというアイドルを殺さないで…!ステージに立ったことを、後悔しないで欲しいんです。僕は、これまでもこれからも、あなたのファンです!」
そうか。ここにも、私のことを好きでいてくれた人がいた。ずっと、私が知らないところで、Lioを生かし続けてくれていたんだ。
『ありがとう…。ありがとう。
Lioを、愛してくれて ありがとう』