第106章 ねぇよ
『どうにかこの人だけでも帰してもらえませんかね?実は、もうすぐ舞台の幕が上がるんですよ』
「帰すわけねぇだろ。黙ってろ」
『知ってます?引き金をひいたのはってタイトルなんですけど、CMもいっぱい打ったから知ってますよね?』
「…黙ってろ。次はねぇぞ」
『3人とも、必死で練習してたんです。だから、どうしてもステージに立たせてあげたいんですよ。絶対に素晴らしい舞台になります。あぁ良かったら、貴方達全員を招待しま』
次はない。有言実行を果たすように、男は私の腹に前蹴りを入れた。
『っ、…ぅ、げほ!』
「春人!っ、おい!やめろ!こいつには手を出すな!」
「出したのは足だよ。ばーか」
女性の腹部は蹴ってはいけない。小学校で習うはずだが、こいつは知らないのだろうか。あぁ違うな。今の私は男の格好をしているのだった。
とにかく、こうして輩の注意を私が引き続ければ、楽に危害が及ぶ確率はぐっと下がる。こんな責任の取り方しか出来ないが、何もしないよりずっといい。