第97章 諦める理由にはならねぇだろ?
いや、そんなことよりも。この男が抱く、春人への異様な執着は何だ?仲間や絆なんてものを、とっくに超越しているようにすら感じる。
彼は、春人がエリであることは知らないはずだ。だから、もしも楽がエリに惚れているのだとしても、春人に拘る理由には繋がらないはず…なのだが。
「…なぁ、あんた。もしかして、あいつのことが好きなのか?」
「当たり前だろ。好きだよ」
楽は、けろっと言い放った。やはり、春人に対して特別な感情はないらしい。この手のことで、俺の勘が外れることは珍しい。
「助けてって、手を伸ばしてくれないのが悔しい。でももし強情なあいつがそれを言う時があったとしても、手を伸ばす相手は…多分、俺じゃない。そのことが、もっと悔しい。
って、思うぐらいには好きだ」
「あっ…」察し
いま、確信した。こいつは、無意識下で春人に惹かれつつあると。俺には、それが昔からなのか最近 芽生えたものなのか分からない。
しかし…人の中を見る力が異常に高いエリのことだ。きっと彼女なら、楽の変化も見えているのではないだろうか。
「くく…っ。俺にくれよ。プロデューサー」
「だから何回もやらねぇって言っ」
「既に付き合ってる男がいる。なんてのは、諦める理由にはならねぇだろ?」
「…しかも、くれって そっちの意味かよ」
「まぁとりあえず、ŹOOĻの所有物にするって意味にしといてやる」
そして、いずれは楽が言った “ そっちの意味 ” で、必ず奴を手に入れる。
「どういう意味であったとしても、くれてやる気はない」
「お前らも、どっかの誰かから奪ったんだろ。なら、俺達が奪ったところで 文句は言えないよな?」
「…奪う?出来るもんならやってみろよ」
扉の前に立った楽は、最後にこちらへ振り返って宣言した。
「それに、奪うって言ったら俺の方だ。抱かれたい男ランキングのトップ、また近いうちに奪い返してやるよ。首洗って待っとけ」
「……そっちは、くれるんじゃなかったのかよ」
収録前に、廊下で交わした楽との会話を思い出して、去りゆく背中に ジト目を向けた。