第76章 知らず知らずの内に、同じ女に惚れていたんだな
会場内が、にわかに騒つく。それもそのはず。皆、ゲストの出演など寝耳に水だからだ。
「ゲスト?誰だ…MAKAと同じ、プロダンサーか?」
『どうでしょう。ピアノがステージに置いてあるので、もしかしたら外国の歌手の方が弾き語りでもするのかもしれませんね』
などと、呑気に会話していたのだが…
なんと!私と楽の頭上に、煌々とスポットライトが降り注いだではないか。
「『は?』」
《 スペシャルゲスト…!TRIGGERーー!! 》
頭が真っ白になるのを通り越して、真っ赤になった。
いやいやいやいや。色々と、ありえないだろう。
しかし場内は、意外にも大歓迎ムードだ。ここが日本ならこの盛り上がりも頷けるが、さすがに海外でのTRIGGERの認知度はそう高くない。
よく知らないゲストだとしても、サプライズ演出ならば盛り上がれてしまうのは、やはりお国柄だろうか…
《 日本では、知らない人がいないトップアイドルTRIGGER!そのリーダーの八乙女楽と、お付きの作曲家に来てもらっちゃってます!
実は2人とも、私の大親友なんだ!!
ほら早く早く!皆んなを待たせないで!早くステージに上がって来てよ! 》
「……上がって来いって、言ってるよな。あの馬鹿」
『お、落ち着いて下さい。馬鹿とか言っちゃ駄目です。
カメラは来てないですが、録画はされてるでしょうから。口元が写れば、悪口言ってるのが収録されちゃいますよ』
私は口元を手で隠して楽に伝える。
頭の中は真っ赤っか。これから私達はどうなってしまうのかという不安感。一身に浴びる事となった17500人の視線。
が、こんな状況でも楽は、一部の隙もない笑顔を人々に向けていた。
さすが。としか言いようがない。突然に立たされた窮地でも、咄嗟に出るのはアイドルスマイル。どれだけピンチな場面でも、輝かしい姿で人々を魅せるのが彼の仕事なのだ。
こんな時なのに、私は彼の中に本物のアイドルを見た気がする。