第48章 空模様
夜になると歩くことも難しくて、水も上手く飲みこめなくて苦労した。
「病院行こう」
仕事から帰ってきたばかりの実弥が、ソファに寝転ぶ私に言った。
「…うん」
断る理由もなかった。
そして、実弥がどたどたと動き出した。
私の保険証、現金を鞄に入れて、戸締まりなどをすばやくすませた。
「行くぞ、頑張れるか?」
「……。」
私はふらふらと立ち上がった。実弥が薄い上着を私に羽織らせた。
彼の肩を借りながら駐車場まで降りて、車に乗り込んだ。
私を見るなり病院の人達は慌て出した。
夜なので受け付け時間外だし、普段とは違う様子に目を奪われた。
寝台に乗せられて、どれくらい時間がたったかわからない。脈を測ったり問診を受けたりそれ以外にも色々とあって落ち着かない時間だった。
ああでもないこうでもないとあわただしく声が聞こえたが、私の耳はそれを適切に聞き入れなかった。
「今は詳しい検査はできないので、明日の午前に行います」
私と側に座る実弥に、先生が言った。
「今晩は様子を見ましょう。」
「病院に泊まるってことですか。」
「そうなります。」
実弥の感情が揺らいだのがわかった。
「…あの」
声を出すと、皆がじっと見つめてきた。
「私、大丈夫ですか」
短い文章なのにそれだけで息が切れた。
「今は何も言えません。」
先生は本当にそう思っていた。
けれど、わずかばかりの何かに対する確信を、私は感じることができた。