第33章 𝐋𝐎𝐂𝐔𝐒 *
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あれから月日が
二年余り過ぎていった。
授業が終わると鞄を背負って
キャンパスの外を出て、
優美な姿勢でアスファルトを踏んで歩く。
ケンジはあの騒ぎが終わってすぐ
無実の罪で釈放された。
真犯人はメリッサだった。
サバクト刑務所の騒動を知ってから
罪の意識に耐えられなくなり、
動機となったケンジに
直接話したいと自首を申し出たのだ。
「ごめんなさい。
刑務所の生活は辛かったでしょ?」
「一生ない経験だった。
どうしてチェイスを殺したんだ?」
目を赤くしたメリッサ。
視線を離さずにいると
姿勢を良くして語り出した。
「チェイスのことが好きだったから
彼が憎くなって殺したの」
以前メリッサはチェイスに何度か告白したが
全く相手にされなかったそうだ。
だから仲の良いケンジを口説きにかかった。
「最初はあなたの方を消そうと思ったの。
でも気が変わった。
どうしてだと思う?」
殺人の動機など知る由もない。
メリッサの涙はすっかり引っ込んでいて
不気味にも綺麗に微笑んできた。
「ケンジは鈍いものね。
私の愛した人にも気付けない。
ずっと一緒にいる
チェイスの好きな人も見抜けないんだもの」
「なにが言いたい?」
「私はチェイスとあなたのことを
ずっと遠くから見てきたからわかるの。
チェイスの好きな人は
いつも目の前に映っていたから」
「……え?」
ケンジはそこまで鈍くなかった。
メリッサの意図する発言。
チェイスのいつも近くにいた人物。
それこそがチェイスの想い人。
メリッサの殺人動機。
「命を落として気付かせてあげたの。
私の心は天使だから、
これでチェイスの想いも報われたわね」
メリッサは終始笑みを浮かべていた。
何言ってやがるんだこいつ。
人を殺して笑うなんて。
天使どころか悪魔だ。
神の審配でも下した気になっている。
それから理解不能な発言を繰り返した。
メリッサは「どうぞお幸せに」
と穏やかに笑いながら
警察官に背中を押されて面会室を出て行った。