第7章 ②心が迷うたび、君の元へ。/天窓【月島】
思わずからかうように笑うと、月島さんはぐっと言葉を詰まらせた。
「分かってる」
そんな彼の反応を楽しく思いながら、私は再び天窓へと視線を戻す。
目の前に広がる綺麗な星と夜空、静かな部屋。
そして、その隣には――大好きな人がいる。
時折、私が頭を動かすたび、触れ合う肩越しに月島さんの微かな体温が伝わってくる。
彼はまた、小さく息を吐き出した。
その声音やわずかな身じろぎの気配から、彼の中で何かが限界に近づいているのだけがひしひしと伝わってきた。
「月島さん」
「はい」
「もしかして、お仕事途中でしたか?その、なんだかソワソワしてません?」
「……は?」
不思議そうに、彼は顔を向けた。
「いや、もう本日の業務は終えている」
「……あ、なら良かったです」
ホッと胸を撫で下ろす。
「じゃあ…私と横になるの、嫌でした?」
その瞬間、月島さんの目がわずかに揺れた。
「あなたはまたそうやって……嫌なら、とっくに離れているだろう」
低い声と、少しの沈黙。
やがて月島さんは、天窓から差し込む青い月明かりを背負い、ゆっくりと体を起こすと、私の頬にかかった髪をそっと指先で払った。
「……和栗は本当に、無自覚なんだな」
「何がですか?」
「……いや」
月島さんは困ったように少し口角を上げた。
「知らない方がいい」
「えー……」
「その顔をされても困る」
その瞳が、暗がりの中で普段よりも揺れている。
「今これでも我慢している…かなり」
「へ」
「和栗がこうして隣にいて、無防備に笑ったり触れたりしてくるのに……何も感じないほど、俺は鈍くない」
「……月島さん?」
「……むしろ」
そこで、言葉が途切れる。
「……いや、流石にこれ以上は言わない方がいいな」
私は思わず、目をパチクリさせた。
月島さんはほんの一瞬、私を見る。
その目はいつもの落ち着いたものより、ずっと熱を帯びていた。
「どうして?」
「あなたが困るだろう」
「……困らないです」
「俺は困る」
即答に思わず、緊張の裏返しのような笑みがこぼれてしまう。
月島さんの大きな指先が、そっと私の頬に触れた。
ひんやりとした指が、熱を持った皮膚をなぞるように優しく撫でると、上から優しいキスが落ちてくる。