第824章 巫女の賀陽さん
眠れない…。
最近なぜか、夜中に何回も目を覚ます。
時計を見ると1時間も眠っていない。
おかげで毎日寝不足だ。
「ふぁぁ…」
「…吉崎、また欠伸か?
毎日夜更かししてると何かに取り憑かれるぞ」
仕事中に欠伸ばかりしているからからかわれる。
「何かってなんだよ?
…これが不眠症ってやつなのかな?
眠いはずなのに夜中に何度も起きちゃうんだよ」
「あまり酷いようなら病院行っとけ…
仕事に支障が出たら俺が困るんだからな」
同僚は笑いながら言ったが、確かにこれ以上続くなら仕事にならない。
「…吉崎くん、眠れないの?
これ飲んでみる?」
最近途中入社した賀陽《かよう》さんが話し掛けてきた。
仕事以外ではほとんど話した事はないが、社内では美人だと噂になっていた。
しかし本人は常に冷静で冷たい印象があり、正に『クールビューティ』と言った人だ。
「…何ですか、これ?」
「いわゆる睡眠導入剤みたいなものよ
私も眠れない時に使ってるの…」
ウインクしながら渡されて、ちょっとどぎまぎしたが断る理由もないので受け取った。
「…こんなもんが本当に効くのか?」
半信半疑だったが、貰った薬を飲んだその日は夜中に目を覚ますことはなかった。
その代わりなのか、普段あまり見ない夢を見た。
巨大なてんとう虫に跨がり大空を駆けている夢だ。
始めは真っ暗な所から明るい青空に出て爽快な気分だった。
不思議とその日から不眠症は治った。
賀陽さんにお礼をしようと思ったら…。
「…賀陽さんならもう辞めたよ
なんでも実家の神社が忙しくなったとか…」
「神社?…じゃああれはご利益ってことなのかな?」
後で知ったのだが、てんとう虫は天道虫、御天道様の遣いと言われている。
賀陽さんが遣わしてくれたのかも知れない。
「…え?ってことは、何か憑いてたのか!?」
今となっては確かめようもない。
end