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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




そこからはもう、大変だった。
なにしろ、プリクラについてはローも勝手がわからなかったので、必然的にムギが主導しなければならない。

けれども、普段人に指示し慣れていないと、こういう時にうまくいかない。

「もっと屈んでください。頭ちょん切れますよ?」

「こうか?」

「もう少し。ほら、ちゃんと画面で確認して。」

自分たちの姿が映った画面を見て、膝を曲げたローがぐっと身を寄せてくる。

「近いッ! ちょっと、近いですよ……!」

「お前が近寄れと言ったんだろう。」

「近寄れなんて言ってませんよ、屈んでって言っただけで!」

「どっちだって同じだ。……おい、カウントダウンが始まったぞ。」

「えッ、ああ……!」

――カシャッ

一枚目の写真は、パニックを起こすムギと普段どおりの仏頂面なロー。
無表情でも仏頂面でも、変わらず格好いいのが憎い。

「次は?」

「えと、次はアップなんでもっとカメラに寄って……って、だから近いです!」

息が頬に触れるほど距離が近づき、堪らずフレームアウトした。
顔中にこれでもかというほど熱が集まり、この空間に居続けるのが無理に思える。

「離れてどうする。またカウントダウンが始まったぞ。俺ひとりで写ってもしかたねェだろ。」

「いえいえ、どうぞひとりで……って、わぁ!」

問答無用で腕を引っ張られ、つんのめるようにして画面に入った途端、シャッター音がカシャリと鳴る。
二枚目の写真は、眉を顰めてムギの腕を引くローと、厚い胸板に鼻を埋めたムギ。

これを抱擁と解釈するか、人攫いと解釈するかは五分五分といったところ。

「真面目にやれ。誕生日を祝うつもりはあんのか?」

「いや、まったくないです。なに勝手に誕生日プレゼントにしてるんですか。」

ローがやりたいと言うから付き合ったが、誕生日云々のつもりはない。
正直に告げたら、ローは舌打ちをひとつして、「可愛くねェ」と呟いた。
可愛くなくて結構である。

「どっちでもいいが、やるからにはしっかりやれ。奢ると大口叩いたのは誰だ?」

「ぐ……ッ」

たった400円の遊びで、ここまで苦しめられるとは。
しかし、400円といえどもお金を無駄にしてはいけない。

――カシャッ

三枚目にして、ムギたちはようやくまともな写真を撮った。



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