第9章 現世編(後編)
「てンめこのケガしてんじゃねぇか!!誰のカラダだと思ってんだコラァ!!」
「まぁまぁ、キズは私が治すから落ち着いて…。」
自分の肉体の胸倉を掴み怒鳴る彼にゆうりは苦笑気味に宥める。しかし彼は止まらなかった。斬魄刀を振り上げその鋒はまだ消滅していない虚の体に突き刺さる。
「こんなザコにそんな血まみれにされるぐらいなら戦おうとかすんじゃねぇよ!!」
「ギャーー!!いでーーーッ!マジいでーーーっスーーー!!!」
「な………ッ、何言ってんだ!あんたがサッサと来ないからオレが戦ってたんだろ!オレが戦ってなかったらなぁ…あそこの小学生のヤツら…」
「…ギ…くそォ…てめェら…3人まとめて喰ってやるァ!!」
「「うるせェっ!!」」
襲いかかろうとする虚に一護の斬魄刀と改造魂魄の蹴りが炸裂する。仮面を破壊されたソレは後方へ吹き飛ばされていく。
「カ…ッ」
「!!」
「あッ!?おい!どうしたんだ!?」
改造魂魄は地面に落ちていく虚に向かって駆け出した。咄嗟に一護が声を上げたが彼の耳には届かない。何が目的か、虚が屋上の地に落ちるより先に巨体の下へ、身体の正面を空へ向ける形で潜り込むと、力の限り蹴り上げた。虚は静かに頭から消滅していく。改造魂魄は勢い余り、屋上の柵から投げ出された。
「あ。」
「バ……ッカやろ!なんつー無茶すんだテメェは!?」
重力に従い、地上に落ち行く己の肉体の胸倉を一護は間一髪で掴む。このまま落ちていれば流石にひとたまりもなかった事は容易に想像できる。
「虚は頭割りゃ放っといても消えるんだ!それをわざわざ蹴り上げたりして…なんなんだ?あいつがココに落ちたら困るみてーな…」
「…アリの行列?」
ゆうりも手を貸し、一護の肉体を引っ張り上げる。彼の視線が地面へと下がっていくので、それを追いかけると小さなアリ達が行列を作って歩いていた。
「まさか……オマエこれをツブさねーようにあんなコトしたなんて聖者みてーなコト言うんじゃ…」
「そ……そうだよ!悪ィかよ!オレは…オレは何も殺さねェんだ!!」
「………。」
「…オレが作られてすぐに破棄命令を出されたんだ…。そして作られた次の日にはもうオレは死ぬ日付が決まってた!!オレはあの丸薬の中で毎日怯えてたよ。周りの仲間が一日ごとに減っていくのを見ながら。」