第10章 アザレアのひととき
『太宰さんは取られるし』
「だから誘ったじゃん、来るって」
『中也さんはリアのことぜぇんぜん気付かなかったし』
「まあ人魚さんだったしなぁありゃあ」
『……』
しゅぅん、と垂れる耳と尻尾。
いや、分かりやす…
それから変化をといたかと思えばずる、とこちらにもたれかかるように体重をかけてくる。
突然の動きにびっくりして見てみれば、いつの間にか視界に入ってくる煌びやかな鱗に鰭。
……えっ?
「り、リアさん?ここでそうなんの??」
「わぁ〜、君そんな甘え方知ってたんだ?こっちにもおいでよ」
『ひぅ、…っ』
「触んなコラ」
つぅ、と鰭を指でなぞられたところでビクッッ、とはねる様子に即座にそいつから奪い返して膝に乗せる。
何してくれてやがる、普段よりこっちの姿の方が敏感なんだよリアは。
『…、♡』
「…?なんか機嫌よくなってねえ?」
『中也さんこっちの方がやさしーから』
「そうか?そばにいねぇと陸地じゃ大変だろ」
鱗や鰭を直接見た時に気持ち悪いだろうと、言っていたっけか。
よっぽど嬉しかったのかなんなのか、たまにこっちの姿になってくれた時は毎度恥ずかしそうにしていたけれど。
「今日は恥ずかしがんねぇのな」
『……綺麗っていっつも思われてるのが照れちゃうだけ』
「お?恥ずかしかったんじゃないんだ?」
『う、ん…、全然???』
嘘下手くそか。
「…ふぅん?綺麗じゃないか」
『きれ、っ…♡』
おい、何太宰なんぞ相手に照れてやがる。
「リアがそっちに変化してるの初めて見た!」
『な、なんでそんな見てんのマーク君』
「可愛いから?」
『か、かわいい???』
ちらりとこちらを振り向いて、俺に聞いてくるので可愛いと返して撫でる、撫でる。
そうする内に彼女が太宰の木偶やトウェインに手招きをし、寄ってきたそいつらの…頬に口付けをし始めて……?
「…リアちゃん?」
『ん』
「ええっと、どうしたのかなあ」
『リアに会いに来てくれた』
「じゃあ僕のは何」
『マークくんもいっしょ』
男ふたりが呆気に取られているうちに無理矢理顔をこちらに向け直し、ぺち、と軽く軽くチョップしておく。
『ぁいたっ』
「次やったら覚えてろよ姫さん」
『……中也さんはあの、ここじゃいやなの』
「そういう問題じゃねえ、ダメ」
『ダメかぁ…♡』