第112章 恋愛で※
「いい子だ」
・・・ハロくんというよりは、子ども扱いに近いか。
時々彼はそうしてくるが、もうそんな歳でもないのに、と唇を尖らせていると、彼の腕が徐ろに体に巻きついてきて。
「・・・・・・」
体が密着すれば、互いの心臓の音が混ざり合うようで。
それを感じているだけで、あっという間にのぼせてしまいそうだった。
「・・・ひなた」
暫く、そんな静かな時間が流れた。
時々どこかの雫が、ピチャンっと音を立てる音だけが響くのを聞いていると、囁くように背後から名前を呼ばれた。
「・・・なに?」
僅かに背中へ掛かる重みと、ほんの少しだけ強くなった腕の締め付けに、珍しく察してしまった。
「ヒロという、あの彼のことを聞いても良いか?」
・・・ほら、やっぱり。
彼のことだ。
でもそれは正直なところ、こちらが戸惑うようなことで。
「聞きたいの・・・?」
「聞きたいというよりは、知っておきたいんだ」
知りたい・・・か。
それは公安ならではの思考なのか、それとも零だから知りたいことなのか。
「いつ、どこで出会い、どんな風にひなたへ接していたのか」
・・・私なら、零の過去の女性関係はできれば知りたくないけど。
彼が知りたいというのなら、話すべきか。
「昔、私が務めていた所は知ってるでしょ?その時の教育係みたいな人で。今も昔も変わってない、あのままの人だよ」
「そうか」
零が私のことを調べた時、どこまで調べあげたのかは未だに知らないが。
その記録にすら残らないような付き合いではあったように思う。
・・・あくまでも、私の感覚だけど。
「私が部署を移動してからは、あまり会わなくなって・・・兄に紹介しろと言われた頃にはもう、事実上別れてたみたいなものかな・・・」
そういえば、と兄に言われた言葉を思い出した。
気持ちが最初から無かったのに、彼はそれでも構わないと押され付き合ったのは、正しかったのか、間違いだったのか。
その答えが出ることは無さそうだが。