第112章 恋愛で※
「もう十分、幸せだけどね」
それを言う為に、上げたくない顔を上げて。
目を合わせてくれたのだろうけど。
もう大丈夫だと言うように、お互い濡れて冷たくなった体を抱き合わせた。
「・・・いいや、まだだ」
軽かったその抱擁は、いつの間にかキツく締め上げる程に強くなっていて。
彼の体が震えているのは、寒さのせいなのか。
・・・それとも。
「僕の愛はまだ、注ぎ切れていない」
ーーー
「んっ・・・ぅ・・・」
あのまま、私は担ぎ込まれるように彼の車に乗せられたかと思うと、いつもの家へと帰ってきて。
ハロくんへの挨拶もそこそこにお風呂場へと押し込まれると、温かいシャワーを流しっぱなしで、少し荒々しいキスをされた。
「待っ、零・・・」
既に濡れているとはいえ、服を着たまま風呂場にいるのは変な気分だ。
何とも言えない背徳感がある。
それに、先に彼は温まらないと風邪を引いてしまっては大変だ。
「待てはできないと言っているだろ」
「さ、先に温まって・・・っ」
もう一度唇を重ねようとする彼の体を押すと同時に感じる、冷たい感覚。
やはり体が冷えている。
「・・・何故、別々で入ることになっているんだ」
キスを拒んだせいか、彼は子どものように軽く唇を尖らせると、私に羽織らせていた彼のジャケットを脱がし始めて。
背徳感と同じくらいの羞恥を感じる中、突如襲った寒気に、体を思わず震わせた。
「れ、零・・・寒くなかったの・・・」
シャワーから出る蒸気があっても、寒さが勝ってしまう。
私が彼のジャケットを着ていたせいで、酷く薄着にさせてしまった。
これでは本当に風邪を引いてしまう、と慌てていると、彼は何故か小さくため息を吐いて。
「・・・寒さより、こんな姿を見られる方が耐えられない」
そう言った彼は、壁についている鏡へと私の体を向けると、その姿を私に確認させた。