第7章 近づく距離
青峰君と一緒に過ごす時間はすごく楽してあっという間で、部屋を出る時間が刻々と近づいている。
そういえば…
青峰君は本当はタキシードを取りに来たから今日一回CLに戻るはずだけど…
「青峰君フライト何時?」
「最終のやつだから9時過ぎだな」
「お部屋チェックアウトしたらどうします?」
「決めてねぇ」
あたしは全然食欲ないけど青峰君が夕食を食べるにしても4時じゃ早すぎるし…
お買い物もないって言ってたし…
「…広くないですけど、こっちのお部屋…来ますか?」
「黒須がいいなら」
断られるかと思ってたのにあっさりOKされたからびっくりした。
フロントに連絡して4時以降はこっちで過ごしてもいいか聞いたらOKしてくれて、逆にスイートを引き続き使わせられないことを謝られた上に会計も最後に出るときでいいと言ってもらった。
スイートに泊まると至れり尽くせりでこっちが恐縮しちゃう。
4時まではもう少し時間があるし、こっちの部屋を堪能させてもらお。
お部屋からの景色もソファの座り心地も備え付けの紅茶も。
昨日の夜からずっと青峰君と過ごしたこの部屋はなんだか特別だった。
きっとあたしはNYに来たらこの日の事を思い出す。
初めて男の人と二人で食事をして
初めて男の人と二人でお酒を飲んで
初めて男の人と泊った
初めて男の人といて楽しいと思った
初めて恐怖を感じない男の人だった
たくさんの初めてを経験したこの部屋は、きっとあたしの思い出の場所になる。