第6章 take off
面談の質問事項は多くて中々終わらなかった。
頭の中はNYでいっぱいで、一刻も早くメイクの練習に戻りたいのに解放してもらえない
「持ち込まれた経緯について心当たりはありますか?」
「私から聞いたことを伏せていただけるようであればお答えします」
「分かりました。お名前は出しません」
口約束なんて信用しないし、いずれあたしが話したことはどこかから漏れる。
あたし事実を話すだけ。
あたしの話した情報をどう使おうがそれは聞き取り手の自由
あたしは関知しない
黄瀬君に話したことと同じことを、あたしの感情や考えは抜きに事実だけを話した
「今日はこれで以上です」
今日はってなに?
また呼ばれるの?
あたしにとってこれは仕事じゃない
「申し訳ありませんが月末に国外出張を控えていますのでいつでもというわけには参りません。私にも仕事がありますので、聞きたいことがあれば今日お聞きになってください」
「分かりました。経緯が把握できるまでは調査にご協力ください」
「可能な範囲で協力は致しますが、時間はいつでもはお取りできません」
譲らなかった。
形式的な質問だったとしても、あたしが黄瀬君を好きだと思われたことは心外だった
現場では他のクライアントと変わらずに接してきた。
仕事に私情は挟んでない。
それにあたしは、黄瀬君の事務所との契約で事務所がNGを出してることは一切やってない。
ぶつけようのない苛立ちを感じながら局を出ようとすると、丁度これから撮影があるのかアンナさんとばったり鉢合わせた
「お疲れ!…ってなーんか眉間にしわ寄ってるけど、どーしたの?」
明るくてさっぱりしててお姉さんっぽいアンナさん
だけど週刊誌の愚痴をクライアントには言えない…
「…いや…大したことじゃ…」
「あ!分かった。黄瀬の件でしょ」
「まぁ…」
「あんなの気にしないで。黒須さんの仕事ぶりは中にいるあたしたちが一番分かってるから。NY終わったらまたよろしくね」
アンナさんから別件でオファーをもらったけど丁度コレクションと重なってて断ってしまってたから、アンナさんはあたしがNYに行くことを知っている。
「ありがとうございます」
アンナさんに言ってもらえた言葉が嬉しくて、さっきまでのうつうつとした気分が少し晴れた