第8章 迷える想い
ハンジは、慌てるクレアを見ながらニヤニヤしていて、からかう気満々だ。
ここは逃げるしかなさそうだ。
「わ、私、デイジーに肢巻(しまき)をまきたいので、お、お先に失礼します!フレイア!また夜ね!」
「えー?クレア?もういっちゃうの?」
「アハハ、クレア慌てちゃってー、かわいいなー。」
ハンジは呑気にクレアを愛でている。
「分隊長…クレアをからかいすぎです。」
クレアは全速力で食堂を後にした。
まだ厩舎に行くにもいくらか早いなと廊下を歩いていると、エルヴィンが両手に大量の書類や資料を抱えて歩いているのが見えた。
「団長、おはようございます!」
「あぁ、クレアか。おはよう。」
エルヴィンはいつもの爽やかな笑顔をクレアにむけてくれる。
「すごい量ですね…私、お手伝いしてもよろしいでしょうか?」
「本当かい?嬉しい申し出だね。少しお願いしてもいいかな?」
「もちろんです!」
クレアはエルヴィンから書類を受け取ると、並んで歩きだした。
「ハンジの班は大変じゃないかい?彼女はいつも無茶ばっかりだからな。」
「そんなことありません、毎日が刺激的で新鮮です。でもまだ新兵なので、ハンジさんは私を1人前として扱ってくれません。なんだか歯がゆいです。」
「そうか。ハンジは入団前から君がくるのを楽しみにしていたからね。少し過保護になっているんだろう…」
団長室に着き、中に入るとクレアは紅茶を淹れる準備を始めた。
「団長、厩舎に行くまで少し時間があるので、書類整理、お手伝いします。まずは紅茶でもいれますね。」
「悪いね…お願いしてもいいのかな?」
「はい、もちろんです。それに次にたずねて来るときは私が紅茶を淹れる約束でしたから。」
クレアは無邪気に微笑んだ。
するとエルヴィンは食器棚からティーカップを取り出すと、茶葉の入っている隣の引き出しをあけて、クレアに見せた。
「約束を覚えていてくれたんだね。君がいつ来てもいい様に、準備をしていたんだ。でも、なかなかたずねてきてくれないから、こんなにたまってしまったよ。」
引き出しの中は、いかにも女が好みそうな甘い焼き菓子でいっぱいだった。