【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
「………、」
萩姫様の言葉、
喜作さんの言葉、
どちらもずっと頭を駆け巡っている。
それでも、
彼が戦に行く前に作らなければ、と買ったばかりの布を広げた。
私からの気持ちは要らないかもしれない。
迷惑かもしれない。
少しでも気持ちが伝われば、と。彼の無事と勝利を願って一針一針、気持ちを込めて縫い込んだ。
その間は、
今日あったことを忘れることができたんだ。
でも、手を動かすのをやめたら自然と思考は塗りつぶされてしまう。
言い表せない胸の内を
夜風と一緒に流してしまいたくて、
その晩、縁側から星を眺めた。
現代よりも透き通っていて、星がたくさん輝く夜空。
この時代に来てからまだそんなに時間は経っていないのに、私は本当に思った以上にこの時代に馴染めたみたいだ。戦や命についての考え方、きっとまだ理解できていないことは沢山ある。それでも、人の心は暖かくて、大切に思う人が沢山できた。
…それに、
家康さんに恋をしてしまった。
帰りたい。そうずっと思っていたのに。
今は、帰りたくない。どんな形でもいいから、彼を側で見ていたい。そう思う心が確かに存在する。
「…嘘なんて、つかなきゃよかった。」
成り行きでそうしてしまったとはいえ、
記憶をなくしているなんて嘘つかなきゃよかった。
変人扱いをされても、
信じてもらえなくても、
500年後の未来から来た、とそう素直に告げればよかった。重ねてしまった嘘は、今更どうすることもできないのに。
後悔しても、もう遅い。
私が本当の姫じゃないのは、みんな知っているから萩姫様が怖いわけじゃないけれど、何故か彼女の存在を不安に思ってしまうのは、
嘘つきなのに、
心の何処かで家康さんとの甘い関係を期待してた自分がいるから。そんなの私の未来にあるわけないのに。
「…佐助くんに言わなきゃなあ。」
私にあるのは現代に帰る未来だけだ。
もし、本当にまたワームホールが開いたら、私は必ず現代に帰る。この時代のことは綺麗すっぱり忘れて。
そう決めてまた星空を見上げた。
「…風に当たりすぎると風邪ひくよ。」
廊下の向こうから聞こえた声にハッとして、そっちを向く。…声で、誰か、なんてすぐにわかった。
「…いえやすさん、」