第22章 息抜き
「来い。次はこっちだ」
「は、はいっ」
その後も私は兵長の掃除用具探しの旅に同行し、トロスト区にこれほど多くの掃除用品店があることを初めて知った。
街にほとんど来ない私には新たな発見ばかりであり、兵舎を出発する時に感じた罪悪感などはすっかり消え去ってしまったのだった。
日が傾いてきた頃、兵長はふらりと一軒の店に入っていった。
何も言わずに店の中に消えていく兵長の後を慌てて追いかけると、そこはレストランで、兵長は慣れた様子で窓際のテーブルに腰掛けたのだった。
てっきり、また掃除用品店だと思っていた私はそれに驚く。
「メシにしよう。今日はお前が来てくれて助かった」
勧められるままに席に着いた私に、向かいの席から兵長が言った。
テーブルに置かれたランプの灯りと、窓から差し込む夕日が混ざり合って、オレンジ色の柔らかな明かりが店内を包み込んでいる。
小さいけれど居心地の良い店だ。
「何でも好きなものを食え。遅くなっちまったが、クラバットの礼だ」
スッと差し出されたメニュー表には、普段口にしないような料理名ばかりが並んでいる。
あまりにも流れるようなエスコートぶりに、普段の兵長からは想像がつかなくて、私は思わずチラリと見上げた。
その視線を受けて、兵長が少し唇の端を上げる。
「ただし、酒は無しだ。お前を担いで帰るのはまっぴらごめんだからな」
「えっ」
先日のゲルガーさん達との飲み会を思い出して、私はドキッとした。
あの時のことは記憶が曖昧で、ゲルガーさんに背負ってもらって帰ってきたと後で聞いてもまったく思い出せない。
きっととんでもなくみっともない姿を晒してしまったのだろうと思うと、恥ずかしさで穴に入りたくなる。
まさか…そんな醜態を兵長に見られていたのだろうか?
兵長は目を伏せてメニュー表をじっくりと見ていたので、私はそれ以上何も言わなかった。
何も自分から墓穴を掘ることはないだろう…。