第3章 後編 王の願い 少女の想い
「なぁ、キャプテン。さっきからこっちをチラチラ見てる女がいるんだが」
「お、ついにキャプテンにも春が来たのか!」
「てめぇら適当なこと言うなよ」
仲間の茶化す言葉に苦笑しながら答えるシュライヤ。
だが、彼らの視線を辿れば、確かにカウンターに女が1人で座っていた。
今はこちらを見ていないが、確かに注意深く見ていると、時折こちらの様子を伺っているのが見える。
「なんだ?なんか用でもあるのか?」
「だからキャプテン狙いだって!くそーモテるからって余裕ぶりやがって」
「別にモテた覚えはねぇぞ」
「そう思ってるの、キャプテンだけだから」
何やら盛大なため息を吐いているクルー達に、シュライヤは何なんだと眉をひそめる。
確かに女性から声を掛けられることは多々あるが、それとあの女はまた別の話だろう。
シュライヤは酒を飲み干すと、テーブルに頬杖をついて暫く彼女を観察してみた。
すると、程なくしてバッチリと会った視線。
向こうは慌てて視線を逸らしたが、シュライヤの脳内は疑問符を浮かべる。
用があるなら話しかけてくるはずだ。それをしないという事は…
「まさか誰かの差し金か?」
「いやいや考えすぎでしょ。あの子の表情を見てまだそんなこと言っちゃうの?」
さっきはため息を吐いたかと思えば、今度は呆れ顔のクルー達。
だから何なんだよとシュライヤは顔を引きつらせるが、このままじゃ埒が明かないのは分かった。
こっちに用があるのは、間違いないだろう。
だが向こうから来ないなら、こちらから行くしかない。
普通ならそんな奴、無視していたところだが、シュライヤも何だかんだで満更じゃないのか、その席を立った。
何やら冷やかしの声を掛けてくるクルー達にうるせぇと一喝すると、彼女の元へと足を進めた。