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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




「そして、二つめは・・・」

光太郎は少し間を置いてから、傍らに佇む赤葦に目を向けた。
赤葦もその時の記憶が鮮明に残っているのだろう。
身体の前で組んだ手の指を弄りながら、悲しげに表情を曇らせている。


「父上が残した二つ目の言いつけは、赤葦を木兎家から出してはいけないということ」


“京治には華族と同様の教育を受けさせた。木兎家の歴史や家憲もよく知る、家令として申し分の無い素質を持った男だ”


光臣は光太郎より一つ年下の赤葦に、これ以上ないほどの信頼を寄せていた。


“お前が京治に対して不信感を抱くこともあるだろう。それでも必ず、そばに置いておくんだ”


「私も先代のお言葉はよく覚えています。光臣様のお気持ちに応えるためにも、私は生涯をかけて旦那様にお仕えします」

あの時の光臣の顔・・・光太郎にはどう見えていたのだろう。
きっと、自分の都合で爵位を継がせることになってしまった息子を労わる、優しい父親の顔だっただろう。

だが赤葦は、壊れやすい羽をピンで標本板に留められた蝶のような気分だった。

それだけ赤葦の目に映る光臣は冷たく、残酷な存在だった。


「父上の言いつけ、八重にもちゃんと話しておくべきだったかもしれない。けど、俺と結婚するために呼んだって知ったら、お前は絶対に気にしちゃうだろ」

「・・・・・・・・・・・・」

「俺さぁ、お前を初めて見た時に思ったんだよね」


“八重!!! よく来たな!!!”

秋の憂鬱な雨とともにやってきた令嬢。
不安そうに自分を見上げる八重を見た瞬間、光臣の言いつけを忘れたわけではなかったが、強く思ってしまった。


「お前を傷つけたくない、守ってやりたいって」


それは理屈じゃない。
光太郎に宿る魂がそう訴えているようだった。








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