第4章 異変
「……私、どうなるんだろ」
知り合ったばかりのクラウスさんに、家に連れ込まれた。
人ごみのど真ん中を、抱っこされて運ばれた気もするが、そこらへんはスルーする!
正面からその記憶に向き合ったら、私は羞恥で死ぬ!!
そういうわけで『クラウスさんに家に連れ込まれた!』ことだけ考えた。
紳士だと思っていたのに、人がうとうとしている隙に! 卑怯者!
私、これからどうなるの!? ま、まさかクラウスさんに――!!
「別にいっか」
特に嫌ではない。別に未経験のねんねじゃないし、クラウスさんなら優しくしてくれそうだし。
……いや、そこまでスレてていいのか、自分?
「それにしてもなあ」
気のせいかもしれないが、この空間に安心感を覚えるのだ。
ついこの前まで、テント暮らしで雑草食ってたのに。
そっちの方の記憶が、あまり思い出せない。
頭を振ってきょろきょろしてると、
「あ、コタツだ♪」
リビングの真ん中に、見覚えのある私のコタツを見つけ、いそいそと向かう。
「……あれ?」
見覚えのある? 私のコタツ?
何か時間が飛んでいるような……。
「私、何か忘れてる?」
それはそれとして、コタツにとっととスライディングしようとして。
「カイナっ!!」
誰かに後ろから抱っこされた。コタツに入ろうとした格好のまま、私は足をじたばた。
だが私を空中に抱き上げたクラウスさん。
私を断崖絶壁から、すんでのところで救出した、という顔である。
「カイナ。そこに入ってはいけない。その電化製品は魔窟だ!
私が止めたにも関わらず君がその中に飲み込まれ、帰ってこなかった悲劇を、私は何度も見ている!」
なんすか、そのループ物みたいなセリフは。
「これには快楽物質を生成し、人類を堕落、依存させる術式が付与されている疑いがある」
いえ、ごくごく普通のコタツです。堕落させるという点には同意ですが。
「あんなものが無くとも、私は君を温めてみせる……だからどうか、誘惑に負けないでくれたまえ。君はレディだが、芯に鋼の強さを秘めている!
君が決してコタツに屈することは無いと、私は信じている!」
その悲壮な声は、ヤクの沼にハマりかけてる人を救わんとするテンションであった。