第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
見えない顔
近くなった男の人の声と香りに
ビクリと震える身体
「…どないしてん?
俺が嫌なんちゃうんやろ?
他の男が良いんやないんやろ?
ほな、なんで…こんなんなったんや?」
抱き締める腕の力が強くなり
「何があったん?」
侑の低い声が私の首筋に落ちてくる
言わなきゃ駄目だ
今なら言えるやろ?
声、出て!
『あ、のな…私、動物園で…』
絞り出した声は今にも消えそうで
心臓の音に負けそうな程
小さく弱くなって行く
意気地のなさにジワリと熱くなる目頭
しっかりしぃや
もうこれ以上、侑に誤解されたくない
それでも中々回らない私の舌
プチプチ途切れる声を遮り
「…姫凪、大丈夫や。
なんでも受け入れる
お前が俺を好きやって言うてくれんねやったら
俺が全部支えたるから…話し、な?」
振り返らせ優しく唇を合わせた
「俺はお前が好きや言うたやろ
安心して、信じとけ…アホ」