第5章 闇夜の調べ
ハイデスの言葉を待つことなく敷地内に入っていく第一騎士団に、せめて馬は降りて欲しかったと愚痴るが聞いてもらえる様子はないので、仕方なしに関係のないルートへは入れないよう、小さな結界やらを施すしかなかった。
最早、屋敷の花を蹴散らさないでくれと言った些細な心配しか無かったハイデスだが、ルシスが用意したというアンリの影武者が一体どのような人物なのか見当もつかない。ジェイドがあのように毅然とした態度でいるからには、何も心配がいらないのだろうという事は予測が付く。だが、何せこの目で見ない限りは分からないとハイデスは多少の緊張感をその目に宿していた。
屋敷の前に来ればハイデスへ断りもなく正面玄関を開け放ち、ルートヴィヒ隊長率いる第一騎士団はガツガツと屋敷の中を歩いていく。手当たり次第に乱暴にドアを開けるから、壊れないように保護魔法をジェイドが掛けている。ハイデスも屋敷内の調度品に何かあっては困ると後ろをついて歩きながら同じように保護魔法を掛けて回る。
様子からして、狙いは彼女であってそのほか物を漁る等と言った目的は無いらしくハイデスは安心していた。
「こりゃ、何を探してんだ…?」
しかし、家宅捜索にしてはやけに雑な動きを見せる第一騎士団に訝し気な表情を見せたのはエルメスであった。
「お前には、後で説明する。」
ここまで見られてしまったのでは、流石に隠し通せないなと思ったハイデスはその真剣な瞳をエルメスへ向ける。エルメスもその表情に何かを察したのか、それ以上言葉を続けることはなかった。
そして、ひとつの部屋を開けようとした時ハイデスが割って入った。
「ルートヴィヒ卿、こちらの部屋はご遠慮願いたい。何せ、私の大切な娘の部屋でありますので。まさか年若い娘の部屋を土足で荒そうだなんて致しませんよね?」
「ふん、なるほどここか。何せ、全て探し出せとのお達しだ、その言葉聞くことは出来ぬ。」