第22章 赤毛の少女と追いかけっこ
「詞織さん!」
僕を庇って、詞織さんが扉の向こうに連れ攫われた。
「二人目、捕まえたぁ☆ どんどんお友達が増えて、アンも喜んでるわ!」
どこまでも嬉しそうな彼女に、僕は恐怖を覚える。
残ったのは僕一人だけだ。
僕一人で勝てるのか?
「あら、どうしたの? お遊戯はこれからが本番よ! あなたは鬼ごっこの天才みたいだけど、この状態で何分心が保つかしら?」
再び、人形が進撃を開始する。
巨大な手が迫り、それを避け続けるけれど……打つ手がない。
今はどうにか躱せているけど、このまま続けば確実に疲弊して、最後は捕まる。
ここからの逆転なんて、僕には無理だ!
もう……太宰さんたちを頼るしかない!
僕は扉――出口に向けて走った。
「お友達を置いて逃げる気⁉」
彼女の言葉を、僕は聞こえないふりをする。
逃げるわけじゃない。
ただ、僕じゃどうしようもないから。
この状況でも太宰さんなら、きっと手を思いつくはず。
でも、僕には無理だ!
こんな過酷な場所に、僕がいる資格なんてなかったんだ!
そのとき、急にネクタイが掴まれ、僕は後ろへ引っ張られる。
「駄目だよ、少年。敵はあっちだ」
ネクタイを掴んだのは、白衣の男性だった。
「わっ」
突然の事態に体勢を整えられず、僕は派手に転んでしまう。
そんな僕たちのやり取りを、赤毛の少女はポカンとした表情で見ていた。
座った状態のまま見上げると、彼は少しオロオロとした態度で口を開く。
「このケースでの逃亡はお勧めしない。その……たかが街医者の言葉を信じてもらえるならば、だが……」
でも、僕一人じゃ……やはり、応援を呼ばないと……。
そんな僕の心を見透かしたように男性は続けた。
「それに、彼女の言葉を信じるなら、そのドアから逃げれば、敵の攻撃手段も捕えられた仲間の危機も忘れ、敵は進撃を続ける」
「あ……」
そうか。
僕は自身の愚かな考えを呪った。
このままここから出ることはできないんだ。
僕が戦うしかない。
けど、でも……どうやったって、僕一人じゃ……。