第244章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(31)時が繋がるルージュ編※R18
その紐を、くるっと身体を反転させた時に踏んでしまい……
家康が咄嗟に手首を掴んで、
転けないように支えてくれた。
本日、二回目。
「…ゴホッ……ドジ」
流石にそのお決まり台詞に、
苦笑いをしそうになる。
「あ、ありがとうっ。ごめんね、二回……も…」
振り返る瞬間に見えた、
鏡に映る二人。
「……どうしたの?」
私はふるふると首を振って、
何でもないと答える。
ぬくもりが消えた後、
まだ感触がくっきりと残った右手首を……そっと握りしめた。
それから……
それから……
廊下で待ってるって言われて……
扉を閉めて、
ルージュを塗ろうと鏡の前に座って。
(あれ?これしかない。でも、これって確か私が廊下で拾った物だよね?)
猪口形の容器。形はカフェで編集長さんに見せて貰ったのと同じだけど、見た目は地味で煌びやかなイメージとは全く違う。
でもよく化粧品のテスターとかはパッケージが違うのは普通にあるから……
そう思い、蓋を開ければ……
緑色一色で、思わずうわーっと声を上げそうになるぐらい、私はビックリ。
(中ってこんな感じだったの!?でも、どうやって塗るんだろう?中紅花って名前が付いてるから、紅みたいにつけるのかな?)
試しに、
ペロリと薬指を舐めて……
緑色を掬い取れば、
じわじわと触った箇所が赤くなり……
スッと薬指を唇の上を滑らせた。
すると溶け込むように
明るい赤に唇が染まる。
上手く塗れたかな?
念の為、スタジオに持っていこう!
数分前?数秒前?……
普通だったのに……
メイクルームから出て……
少し歩いて、
足元がだんだんフラついてきて……
息苦しくなる。
ただ、歩いてるだけなのに……
「ちょっ……と、待って……はぁっ…」
身体が突然、
火傷したように火照り出す。
「ほら、撮影行くよ」
ドクンッ!!
(んっ……な、にこれ…っ)
肩に触れられただけで、たったそれだけのことで甘い刺激が走る。