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【黒バス】短編

第1章 甘く香る(赤司)



「か。まだ残っていたんだね 」


 帝光中学校バスケットボール部主将、赤司征十郎。
私が部室に居残っているとは思っていなかったらしい彼が少々驚いている姿が視界に入ったところで、完全に現実へと覚めていく。
窓の外に目をやれば、まだ明るかった空はすっかり黒に染まり日が落ち切っている。
随分と時間が経過していたらしいことを漸く知れて、窓から赤司へと視線を戻した。

 肌を汗で濡らしたまま、けれど涼しい顔をして入室してきた赤司は練習着のままだった。
部室を戸締りしてから更衣室に向かおうと思っていたのだろう。
確かに、その方が無駄もなく効率的だ。
部室を締めれば後は着替えて帰るだけなのだし楽で良い。

 肩にタオルを掛けているところを観る限り、一応は汗を拭ってきたらしいと推測出来るけれど後から後から汗は姿を現す。
それは練習量を雄弁に物語っていたが、天才だの完璧だの名高い彼が胡坐を掻くことなく練習に励む姿を知っている。
マネージャーとして、そんな選手の手助けが出来るのは自主練習に付き合いサポートすることだけだった。
正直に言えば、出来る範囲が狭過ぎて歯痒い。

 兎にも角にも、そういった訳で部員の自主練習に付き添い下校が遅くなるなど日常茶飯事なため、こうして部室で赤司を出迎えることも珍しくはなかった。
それなのに居残っている私を見て少しの驚きを刻んだのは、文化祭準備のため居残りを良しとしない期間だからこそだと思う。
単純に静かな場所を探し当てただけに過ぎないけれど、汗に塗れた彼を見れば部室で読書をしていたのは正解かもしれない。
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