ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第5章 関係が変わる話
桜は、勇利と会話してから自身の気持ちに蓋をしなくてもいいのかもしれないと思うようになっていた。
勇利の話が本当ならあの酷い行動は嫉妬心から来るものだと予想出来たからだ。
「ヴィクトル…ヴィーチャは本当に私の事が好きなのかな?」
彼に貰った服を抱きしめ呟く。
まだ会う勇気は無いし恐怖も捨てきれない。
けれど、もう少し心の傷が癒えて、勇気が出ればその時にまだ彼も会いたいと言ってくれていたなら、また会いたい。
桜はそう思っていた。
そんな日が続いた日曜日のこと、桜は母に頼まれて買い出しに出掛けていた。
「そういえばここって前にあの人と一悶着あった所だよね」
「あの人ってヴィクトル選手?」
「そうそう……ってヨハン!?」
奇しくもこの場所であの時に会ったヨハンとも出会うだなんて、なんたる偶然かと驚いた。
「まさかまたサクラと会うとは驚きだよー、もしかして毎日来てる?」
「まさか、そんなに暇じゃないよー、今日は母さんに買い出しを頼まれて…ほら卵とヤギのミルク、あとチーズとビーツ、ジャガイモ。正直めっちゃ重い」
「それは重そう、手伝おうか?ーーーあサクラサクラ、あっち」
「え?何?」
ヨハンの指さす方を見遣れば、驚くことなかれ、まさかのヴィクトル・ニキフォロフが桜達を見ていた。
この間と違うのは彼はこちらに話しかけず、何故か悲しそうな表情をしていることだろう。
周りもそんな彼の様子にいつものように群がってはおらず、遠くからチラチラと見ているようだった。
「サクラヴィクトル選手と買い物来てたの?」
「……んな訳ないでしょ」
「だよねぇ、だったら荷物持ってもらってるよね?あのさ…なんか元気なさそうだね」
(確かに元気がない、むしろ今にも泣きそうな顔をしている)
桜は先程まで確かにまだ彼と会って会話は出来ないと思っていた。
しかしいざ彼の姿を目にすると、思っていたよりは恐怖を感じなかった。それはきっとヴィクトルの様子が弱々しく見えたからだ。
(何故泣きそうなの?もしかして私がまたヨハンといるから?)
思考の海を漂っていると、ついにヴィクトルは蹲ってしまい、それを遠巻きに見ていた周りの人たちはザワザワと色めきたった。
(ええいままよ!)