第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『ま、まっつ~ん、これ、マジで反則っ、
ギャハハハハ…』
翌日。
練習前の部室で、
及川が転げ回って笑ってる。
『ヤキモチやくな、フラれチャラ男。』
及川に、スマホを見られた。
…正確には、スマホに貼ったプリクラ。
昨日、彼女と撮って、
"見えるところに貼る"と約束したアレ。
でもまぁ、正直言って、
笑いたくなる及川の気持ちもわかる。
異様に目がパッチリキラキラしてて
頬のあたりがまぁるくピンク、
唇はツヤツヤの赤。
自分で言うのもなんだけど、
笑う以外に有り得ない顔になってる。
『まっつんがこんな露骨に
リア充アピールするタイプだったなんて、
俺、今まで知らなかったんだけど!』
『おかげさまで、お前と違って、
うちはうまくいってっから。』
…まさか、
綾ちゃんのことが気になって
早く帰りたかったからしょうがなく、
なんて、絶対、言えないから、
適当に返事してやりすごす。
『ふふーん、』
及川の不敵な笑い。
コイツがこんな笑いをする時、
ろくなことはない…なんだ?
『まっつん、
ホントにうまくいってると思ってんの?』
『…なんだよ?』
『彼女、疑ってるよ。』
『なにを?』
『まっつんの浮気。』
『なんで?』
『女のカンは侮れないよねぇ。』
『だから、なんだよ?』
フフン、と、笑ってる及川の後頭部に
岩泉の鉄拳が飛ぶ。
『クソ川、チームメイトをからかうな!
…松、今日の昼休み、
お前の彼女が俺らんとこに来たぞ。
お前が最近、あんまり
かまってくれない気がする、って。
なんか、年上がなんとか、みたいな…』
『だから、この及川さんが
ちゃーんとアドバイスしといたよんっ。
まっつんは、美熟女よりどりみどりの
年上キラーだから、気を付けな、って。
まっつんにフラれたら、及川さんが
慰めてあげるからねー、って。
…イタッ(>_<)岩ちゃん、痛いっ!』
『コイツのことはともかく、彼女、
結構真剣に気にしてたように見えたぞ。
松、大丈夫なのか?』
『あぁ、心配かけてごめん。
ちょっとした行き違い、っつーか。
それより、及川、』
『…なにさ。俺は悪いことなんか…
モゴモゴ…言ってない…グエッ!』
岩泉の羽交い締めの腕の中から
呻きながら答える及川。
…俺らのチームの、キャプテン。
バレーに関しては、絶対的な存在。
