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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



『ここ、』

綾ちゃんの真正面に
座りそうになったけど、
そこはさっきまで木兎が座ってた席で。

『…じゃなくてこっち、いい?』

面影が重なったら悪いな、と思って
その隣…綾ちゃんの斜め前…に
座ろうとしたら、

『そっち、不自然でしょ?前、どうぞ。』

とすすめてくれた。

『…じゃ、お邪魔する。』

なんだか、
俺の方が緊張してるみたいで。

何から話せばいいんだ?

『別れたってホント?』は、
さすがに直球過ぎるだろ?

『久しぶり、元気?』じゃ
わざとらしすぎるよな。

…迷っていた時にちょうど、
さっき頼んだドリンクが運ばれてきた。

『…私、頼んでないよ?』

『あ、ごめん。俺が勝手に頼んだ。』

『さすが及川君、やることがスマートだね。
…じゃ、乾杯しちゃう?』

『…乾杯、で、いい?』

別れたての今、
そんな気分じゃ、なくない?

でも綾ちゃんは、
ストン、と素直に頷いた。

『いい。うん、乾杯でいいよ。』

『何に乾杯する?』

『…そうだね…』

グラスを持ったまま、
小首をかしげて左上を見つめ、
考えている姿。

悲しい言葉とか、
逆に、
やせ我慢で元気な言葉とか、
言われてしまったら
俺は、どうしたらいいんだろ…
そんなことを考えながら

綾ちゃんの言葉を、待つ。
…視線が俺の方を向いた。

『自己チューな乾杯でもいい?』

『もちろん。』

『じゃ、』

グラスを持ち上げて、口元で微笑む。

『明日からの自分を信じて、乾杯。』

カチ、と音をたてたグラスは
まっすぐに、
綾ちゃんの口元に運ばれる。
…覚悟を飲み干すように。

"明日からの自分を信じて。"

今、その言葉を言えるのは、
木葉君曰く、
"女の子を泣かせない別れ"という
木兎の奥の手の成果なのだろうか?

聞きたいこと、たくさん、ある。
でも、何から聞けば…
何なら聞いていいんだろ?

自分の"使えなさ具合"に驚く。
本当に、どうしていいか、わからない。

こんな場面に陥ったことがないからだ。

まともな失恋は、したことない。

モテるからではなく、
こうなることを恐れて
本気の恋愛を避けてきたから。

俺、薄っぺらい。

…『いつも全力、いつも本気』の
木兎との懐の深さの差は、
多分、こういう所、だ。

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