第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
開けたままの窓から、
切り取ったように四角い夜空が見える。
…星空、というには
光の数が足りない、黒い空。
ベッドに寝転がって、
綾ちゃんとの会話を
思い出していた。
…偉そうなこと、
言ってしまったかな。
そもそも、
木兎と綾ちゃんが話し合う前に
俺が話してしまったことが
木兎との約束違反、だろうか。
でも本当は、
こうなることをわかってて
電話したのかもしれない。
綾ちゃんに会いたいけど
それが邪魔になるんじゃないかと
気を遣う、木兎の優しさ。
木兎の彼女として
ふさわしい輝きが足りないと
自分に焦りを感じてる綾ちゃん。
…人も、物事も、
"好き"なだけでは
うまくいかないことが
少しずつ増えてきてるのは、
きっと、
人生の選択肢が
増えているから。
誰かにあわせるだけなら
誰かが決めてくれるなら
悩まずに済むはずだけど
そうはいかない、ということは
みんな、わかってる。
木兎も、俺も、綾ちゃんも。
…あの二人、どうなるのかな。
端で見てるだけでも、辛い。
俺だったらとても、そんな決断、出来ない。
もし俺が今、木兎と同じ状況だったら
多分、すごく苦しい。
普通の顔で
変わらずバレーを出来る木兎を、
すごいと思う。
ふと、頭に浮かんだ顔に
心で話しかけた。
…岩ちゃん。
俺、やっぱり当分、
"チャラ男"の"うんこ野郎"でいいや。
バレーで結果出すまで、
とてもじゃないけど
色恋に心、費やせない。
そこまで考えて、
ふと笑いが込み上げる。
…岩ちゃんみたいな女がいれば
話は別だけどね。
厳しいのに優しくて、
俺の弱さも汚さもわかってくれて、
甘やかさないけどうまく転がしてくれて、
俺のバレー人生と私生活、両方の
相棒になってくれるような、
そんな、岩ちゃんみたいな女。
『…オエッ(笑)』
…女装した岩ちゃんを思い浮かべて
笑ってしまう。
でもやっぱり、
世界中のどっかに、
そんな理想にピッタリの人、
いてほしいけどな。
…一秒先のこともわからないのに、
誰が自分の運命の相手かなんて
考えてもわかるはずなくて…
そのまま、眠ってしまった。
お母ちゃんみたいな女装した岩ちゃんが、
俺をガミガミ怒ってる夢を見た。
なかなか笑える夢、だった。