第29章 素直に言えなくて
(Sサイド)
シャワーを借りて、智くんが用意してくれた服を着て。
あっ、智くんの服と同じ柔軟剤の匂い…久しぶりだな。
タオルで髪を拭きながらリビングに行ったけど、智くんがいなくて。
部屋…かな。
智くんの部屋の前に行くと、キャンバスの前にいる姿が見えた。
見渡してみると、俺が何枚も描かれている。
「智くん?」
背中越しに声をかけた。
「あっ、翔くん。」
振り返った智くんは、俺のほうに歩いてきた。
「翔くんと会えない日が続いてさ。」
「うん。」
「翔くんを描いてみたんだけどさ。」
「うん。」
「でも何かうまく描けなくてさ。」
さみしい思いをしていたのが伝わってきて…
智くんを引き寄せて、力いっぱい抱きしめた。