第48章 あなたの為なら☆幸村
『たす…け…て。』
絞り出すようにあきらが呟いた時、ガサッと周りの木々が揺れた。
ヒュッ!
『うわっ!』
男の腰元スレスレをキラリと光る槍が掠めた。
『その汚ねえもん、さっさとしまいやがれ!しまわねぇなら、ぶった斬る!』
『ひいっ!』
慌てて男が後ろに飛び退く。同時に、掴まれていたあきらの体もドサリと地面に崩れ落ちた。
『ゆ、ゆき…むら…。』
どうして…まだ戦は終わっていないはず。
『大丈夫?あきらさん。』
佐助くんまで!?
『心配しないで。成り行きで、仕方なく、止むを得ず、謙信さま達にも話す羽目になってね。なんでそんな大事な事、早く言わなかったのかって、怒り狂って2人で戦ってくれてるから。』
あきらが弱々し笑うと、その体を佐助が抱き起こした。
少し離れた所で、男が叫んでいる。
『貴様らごとき、俺の同胞が…。』
『あぁ、お前の仲間なら全員そのあたりでノビてるぜ。悪いな、お前が最後だ。』
男の言葉を遮り幸村が告げた。
『そ、そんな…。』
バキッ!
素手で男を殴る。殴る度に、ウギャッ、グワッ、と聞こえていた悲鳴が、やがてしなくなった。
『ちっ、気絶したか。』
殴り足りないといった顔の幸村が、男を近くの木に縛り付ける。
『家臣に頼んで、他の奴らと一緒に連れてって貰うか。』
呟くと、あきらの元に駆け寄る。
『あきら之丞、遅くなって すまねぇ。』
幸村…。
『こっち…こそ…ご…めん。しく…じった…。』
『喋らなくていい。だから言ったろ?お前みたいなのが好きな輩もいるから気をつけろって。』
幸村があきらを担ぎ歩き出す。佐助は辺りを警戒しながら その後に続いた。
幸村の背中、広くて暖かいなぁ…。
薬のせいもあり、あきらは いつのまにか目を閉じた。
… … …
無事、陣に戻ると、家臣達が上杉・武田軍の勝利を告げた。
既に信玄と謙信も戻っており、信玄が心配そうに幸村に声を掛ける。
『幸、あきら之丞は無事か?』
『はい、薬のせいで体が動かないようですが、意識はハッキリしてるみたいです…って、寝てますね。』
そうか、と信玄が覗き込む。むにゃむにゃと何か寝言を言っているようだ。
『幸村…大好き…。』